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環境浄化、リサイクルに資源処理工学技術を応用

大学院工学系研究科 地球システム工学専攻
教授 藤田豊久

●焼却灰から塩素を除去し、セメント材料として再利用
 持続可能な社会の構築には、限られた資源を再利用したり、効率よく使ったりすることが求められています。そのために我々は、専門の資源処理工学の技術を生かし、環境浄化、資源のリサイクル、省エネルギーの研究に取り組んでいます。
 有害物質などを取り除く環境浄化では、例えば産業廃棄物などを焼却したときに出る焼却灰からの塩素の除去があります。日本では年間600万トンをこえる焼却灰の大半は埋め立て処分されますが、これをセメントに再利用しようという動きが広がっています。ネックは焼却灰に含まれる塩素で、ビル建築などに利用した場合、鉄骨の腐食の原因になります。我々は、二酸化炭素ガスのマイクロバブルを吹き込むと、塩化カルシウムとして溶け出すことに着目し、安価に塩素の除去ができる技術を確立しました。
 また半導体、ガラス工場の跡地では、フッ素、ホウ素の汚染が問題となっていますが、汚染された土壌に硫酸などの工業薬品を加えて加熱することで、環境基準以下に抑えられることを確認しました。ほかに土壌中のダイオキシンを微生物で分解する手法にも取り組みました。井戸水などに含まれるヒ素、セレンなどの有害イオンを除去する水質浄化も行っています。
 リサイクルでは、製品に含まれるニッケル、白金、ニオブ、リチウムなどのレアメタルの回収が今後、重要になってきます。今、需要が増大している携帯電話を水中で爆破し、その中に含まれる液晶、金などを回収する技術を開発したほか、DVDを水中爆破することで薄膜材料の銀の回収にも成功しました。電池からのリチウムやコバルトの回収も重要です。製品の部品、材料にICタグを付けて、仕分けを簡単にする新しいリサイクル法にも取り組んでいます。
世界の年間石油生産量がピークを迎えつつある現在、省エネルギーも原子力、化石燃料、自然エネルギーのバランスの取り方にブレークスルーが求められます。原子力利用促進のために使用済み燃料などからの元素の利用、バイオ燃料の効率化のための技術開発にも力を入れています。

●幅広い知識を結集して、国際貢献ができる研究分野
 中学、高校時代は、化学反応を見ること、モノ作りが好きでした。親のいる千葉から離れたいのとスキーがしたくて東北大学を選びました。当時は原子力工学などが時代の華でしたが、エネルギー、資源関連の重要性を感じ、環境浄化、物質の選別に有効な磁性流体の研究に入っていきました。1970年代後半以降の環境への関心の高まり、世界的な省エネの流れの中で資源工学の視点が省エネ、環境浄化の中でますます比重が高まっているのを感じています。
 我々の研究は、幅広い知識の結集が不可欠な分野であります。その意味でCOEの連携はとても役に立っています。研究室は、中国などアジアからの留学生と年齢層が広い大学院生がいるのが特徴です。海外での国際会議で院生は必ず発表し、ゼミの議論も活発で楽しいものです。
 若い研究者には、雑多な情報の中で、さまざまな実験と議論、考察を通じてどれが進むべき方向で正しい情報なのかを見つけていってほしいですね。環境、エネルギー分野もどれが正しい、進むべき道なのかはわからない。実験を主体と試行錯誤の中から、見えるものを楽しんでほしいと思います。研究が行き詰まったときは、企業の人と議論し、新しい見方をもらうのですが、やはり実験に打ち込むことで、風穴があく、問題が解消することも少なくありません。ゴルフ、ウォーキングのほか昔から弾いているマンドリンもいい気分転換です。
 地政学的な面から、環境・地球科学分野の研究者は今後もっと必要です。国際貢献できる分野でもあり、多くの人が興味を持ってほしいと思っています。

携帯電話からの資源の回収
金属とプラスチックなど異なる密度の物質を相互に剥離できる水中爆破
破砕を用いて、廃棄された携帯電話から資源を回収する。水中で少量の
火薬を爆発させ、生ずる衝撃波と気泡で携帯電話を分離したところ

図
焼却灰を資源化するための処理
CO2マイクロバブル吹込みによる
焼却灰の脱塩、炭酸カルシウムと
してCO2の一部固定化と金属回収
を行っているところ

図

藤田豊久 教授
<略歴>
1976年東北大工学部資源工学卒業。78年同大助手、83年工学博士。秋田大鉱山学部講師を経て95年同教授(98年〜2003年は同大工学資源学部教授)。98年に東北大学流体科学研究所客員教授、米国セントクラウド大学客員教授を歴任。2000年に秋田大サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー長、2002年に東京大学大学院工学系研究科教授(併任)、2005年同研究科地球システム工学専攻教授。環境資源工学会会長。

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