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エネルギーや生体をテーマに、安心で安全な社会に貢献する研究を

大学院工学系研究科 機械工学専攻
教授 金子成彦

●居眠りのメカニズムを調べ、居眠り運転防止シートを開発
 「安心で安全な社会を構築するのに貢献する研究」が私の研究室のモットーです。 具体的には、振動や騒音、その他の機械やシステムで発生する動的問題の制御をテーマにしています。とくに小型分散エネルギーシステムを研究しており、今後分散型エネルギー社会の中核になるマイクロガスタービンの要素研究やガスエンジン制御システムに関する研究を行っています。
 COEでもバイオマスエネルギー変換システムを研究しています。低カロリーで成分の変動が激しいバイオマスエネルギーを小型のエネルギー変換システムで活用することが目標です。
 また、生体内部で起こる現象のセンシング技術も開発しています。
 2007年には居眠りの予兆を検知する居眠り運転防止シートを共同開発しました。運転者がシートに座るだけで、磁気回路センサーと圧力センサーによって心拍数や呼吸数、からだの動きを計測でき、運転者の入眠前には警告音を発します。共同研究を通じ、脈波と呼吸を観察すると入眠状態の約10分前から一定の前兆信号が表れること、入眠前の筋肉の運動量が多いほど入眠までの時間が短いこと、肉体的・精神的に疲労が少なく、覚醒状態を保てるのは背もたれ角度が33度であることなどがわかり、医学的な成果を挙げられたのも収穫でした。ほかに高精度で高機能の脈波・血圧モニタリングシステムも開発中です。
 新しい工業教育手法(PBL:問題設定解決型教育)にも力を入れています。実際に社会で起こっている問題にグループで取り組むことで問題解決能力を高めるのです。アンテナを張り、自分や仲間の研究を俯瞰的に見ながらゴールを目指す過程で、知識を得られ、“技術の目利き”ができるようにもなります。また、留学生や企業の研究者など異文化を持つ人たちとの濃密なコミュニケーションも大きな経験です。PBLを通して、学生たちが小さな成功体験を重ね、成長していく姿を見るのはほんとうにうれしいものです。

●働く人の視点から研究テーマを掘り下げたい
 生まれが山口県湯田温泉の鍛冶屋で、また後の東大工学部に繋がる工部大学校の創設者で“工学の父”と呼ばれる山尾庸三博士の出身地であることから、モノづくりや工学には親しんでいました。県立山口高校時代に天文部に所属し、そこで星の瞬きと気圧の谷の通過の関係を調べていたころから、光電管などの器械に興味を持ちました。東大工学部入学後は、藤井澄二教授のチョーク1本だけで行われる授業がおもしろく、そこから振動やその計測、制御の研究に入ったわけです。
 調査で振動や騒音が問題となる現場に入るうち、そこには働いている人の立場になる人が少ないことに気づきました。そこで労働者からの発想で現実の問題の解決のために専門性を生かそうと思ったのです。例えば、トラックのドライバーは時間に追われ、事故が起こった場合にも自己責任にされかねません。そういう人たちに居眠り運転防止シートが役立てばと願っています。終電の時刻を30分早くすれば、エネルギーや労働環境がどう変わるかをシミュレーションするというようなテーマもおもしろそうです。
 仕事が詰まってきたときには、『定時に帰る仕事術』(ローラ・スタック著)を読み返し、時間管理を徹底します。ただし、家庭菜園や植木の手入れ、毎朝豆から挽いてコーヒーを入れるのはリラックスのための大事な時間として確保しています。
 若い人たちには、好奇心を持ち、感性を磨いて、素直な疑問と素朴な感動を大事にしてほしい、近未来における時代のニーズを掘り起こす努力を続けてほしいと思います。近いうちに使われなくなった研究用機器をリユースできるシステムをネット上に立ち上げ、お金ではなく、モノで若い研究者たちを応援したいと考えています。

図
シートには磁気回路センサーと圧力センサーが組み込まれ、座るだけで運転者の
姿勢や心拍数、呼吸数が計測できる。呼吸数の低下など、運転者に入眠前の独特の
兆候があらわれると警告音を発する。東京大学、大分大学、島根難病研究所 、
デルタツーリング、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の共同研究。

金子成彦 教授 <略歴>
1981年 東京大学大学院博士課程修了 、工学博士取得。同年、東京大学工学部講師となり、翌年助教授に就任。85〜86年カナダ・マギル大学機械工学科客員助教授を務める。89年東大総合試験所助教授、92年 東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻助教授、2003年から現職。専門は小型分散エネルギーシステム、バイオマスガスタービン・ガスエンジン、エネルギーシステムの動特性と制御、流体関連振動、振動騒音制御。

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