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大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 教授 中須賀真一 ●数十個の編隊で、大型衛星並みの機能も実現可能 宇宙の利用というと、①大きな衛星、②巨額の予算、③打ち上げまでに時間がかかる、というイメージがつきまといます。敷居が高く、なかなか企業も参入できません。我々はこのイメージを払拭し、宇宙をより身近に感じてもらいたいと思っています。 研究の柱は、0.5〜10�圓猟蕎�型衛星の開発です。例えば１�圓留卆運�10個を編隊で活用すれば、大きな衛星のある機能を担わせることも可能で、宇宙利用の夢が広がります。小さくたたんだシートを広げ、太陽光発電、宇宙デブリ（ゴミ）の回収に利用できる「ふろしき衛星」の開発も進めていますが、シートの展開に超小型衛星が有効に使えるわけです。 我々は2003年、2005年の2回、世界最小の衛星「CubeSat」（１�圈�10�冦�方）を打ち上げました。通常の衛星が10億円以上なのに、材料費はわずか200万円ほどしかかかっていません。2機とも内蔵の小型カメラが撮影した地球の画像を今も鮮明に送ってきて、2000名を超える人に無料で配信して喜んでいただいています。 |
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●打ち上げ目白押し、教育に最適 2008年以降の打ち上げも目白押しです。「CubeSat」より解像度の高い約30mの分解能を持った望遠レンズ搭載の「PRISM」（約8�圈法�国立天文台と共同で星の三次元の位置を精密に測定する「Nano-JASMINE」のほか、オモチャのレゴブロックのように、さまざまな機能を持ったパネルを目的に応じて組み合わせて作る「PETSAT」などの衛星の打ち上げが続きます。 超小型衛星の開発は日本が先陣を走っています。盆栽、箱庭に見られるように限られた空間に多様な機能を詰め込むのは日本人の得意芸です。その意味で、超小型衛星は世界に貢献できる分野と言えます。将来的には、人工知能などを活用した衛星など新しい宇宙システムも構築したいと思っています。 超小型衛星の開発は、教育にも最適です。学生が大学院卒業までに少なくとも1回は、基礎技術から、モノ作り、打ち上げの実証試験、運用までを体験できます。現実の世界ほど正しい先生はいませんから良い機会です。博士課程の学生が仕切りますが、研究者であると同時に、良いリーダーになってほしいと願っています。 |
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●バランス大切に、とにかく考えぬく 子どものときは、飛行機が好きで、家にあった戦闘機などの設計図を書き写して遊んでいました。機能を追及するとなぜか美しくなることに惹かれました。アポロ11号の月面着陸の映像はこの道に進むきっかけとなりました。もともと人工知能の宇宙への応用など、理論中心の研究だったのですが、民間企業を経由して東大に移り、1999年に米スタンフォード大で研究員をしたとき、「こんな汚いところで衛星ができるんだ」と大変驚いたのを覚えています。それからモノ作りの楽しさに引き込まれ、1999年の缶で作った最初の超小型衛星「カンサット」の開発につながったわけです。 若手に強調しているのは、バランスの大切さと独善的にならないこと。研究成果がどう社会につながるかを、多くの人と議論し考えること。その過程での気づきを大切にしてほしいですね。 研究のアイデアは、とにかく考え抜くことで出てきます。それ自体楽しいことで、一杯やっているとき、寝る直前のリラックスしたときにひらめき、アイデアが統合されることもあります。枕の下にはメモ帳を置いています。趣味はテニス、野球などスポーツ。研究に行き詰まったときは、体を動かすことで自分を取りもどせますね。研究室は、毎年1泊2日の夏合宿をやりますが、サッカー、水泳などただ体を動かすのみで、まるで体育会のようです。 COEでは、ふろしき衛星による宇宙でのエネルギー獲得の研究を続けています。他分野の研究者との交流はいい刺激です。こうした横断分野のアイデアが宇宙を身近に感じさせてくれると思います。 |
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＜略歴＞1988年東京大学博士課程修了、工学博士取得。同年、日本アイ・ビー・エム東京基礎研究所入社。1990年より東京大学講師、助教授を経て2004年より航空宇宙工学専攻教授。超小型人工衛星の設計・製作・運用、宇宙システムの知能化・自律化、革新的宇宙システム、宇宙機の航法誘導制御等に関する研究・教育に従事。日本航空宇宙学会、IAA、AIAA、SICE等会員。IFAC航空宇宙部会日本支部長、日本学術会議連携会員。 |
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