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先進複合材料と光ファイバによる構造ヘルスモニタリングを研究

大学院工学系研究科 環境海洋工学専攻
教授 影山和郎

●偶然の発見から生まれた光ファイバ振動・音響センサ
 私の研究テーマは先進複合材料や知的構造のシステム、 構造ヘルスモニタリングと非破壊評価です。
 大学院を卒業後、当時の通産省工業技術院機械技術研究所でカーボン繊維強化プラスチックの研究に携わったのが、複合材料をテーマにしたきっかけです。その後本学の船舶工学科の助教授となり、現在の職となっています。職場を移った当時はそれまで船舶を研究していなかったので、船を知るために操船免許を取り、一時は自分で船も持つほどで、研究と趣味を楽しんでいました。
 1999年に有名な国際ヨットレースである「アメリカズカップ」の前哨戦となる挑戦艇決定シリーズ(ルイ・ヴィトンカップ)に「ニッポンチャレンジ」が参加したときにも、私の研究室で船に光ファイバセンサを取り付け、構造の安全性や信頼性に関するデータを集めました。
 現在、リサイクルやリユースができ、環境負荷が少ないCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の開発に取り組んでいます。これはCOEで研究しているテーマでもあります。鋼板など現在自動車などに使われている金属と同様の易加工性とコストがネックですが、実現すれば、例えば自動車ならば車体が軽くなり、燃費も下がりますし、機械や建物にも応用できます。
 構造ヘルスモニタリングの研究では、光ファイバセンサの開発を続けています。2001年、我々の研究室では、学生が偶然、光ファイバを変形すると入力したレーザ光の周波数が変わり、出力が何倍にもなるという事実を発見しました。「湾曲した導波路を伝播する光のドップラー効果」ともいうべき原理で、これを利用して、光ファイバ振動・音響センサを開発しました。メカニズムを突き止めるのには4年ほどかかりましたが、その間に特許を申請して、ベンチャー企業を立ち上げ、現在も共同研究を行っています。
 光ファイバはフレキシブルで細く、耐久性や耐熱性、耐食性があるため、センサとして使いやすい材料ですが、私たちの開発したセンサは1本の光ファイバ上に振動・騒音、音響、超音波など多数のセンサを配置することができ、高感度で電磁波の影響も受けません。このセンサを構造物や機械などに取り付けると、数十km先の測定や長期にわたるモニタリングが可能です。土木建築、航空宇宙、鉄道や道路、化学やエネルギーのプラント、警備保障など広い応用範囲が考えられます。このセンサを構造物の神経網として利用し、構造物が自ら損傷を感じて知らせるシステムの開発も同時に進めています。

●事業化までをマネジメントできる研究者の教育にも注力
 2006年4月に工学系研究科に新設された技術経営戦略学専攻にも、準備段階からかかわっています。科学技術や社会のシステムが複雑化している今、工学分野では科学技術の知識とともにマネジメント能力を持つ人が必要とされています。そこで、この専攻では事業化戦略や研究開発マネジメント、組織論などを学びます。専攻横断型の少数精鋭の教育プログラムで、一芸に秀でた研究者を多芸に秀でた研究者にするのです。この3月に修了する学生たちがどう羽ばたくか、期待しています。また、卒業生のネットワーク化にも力を入れたいと考えています。

●からだを動かしているときにアイデアが浮かぶ
 これまで研究テーマを自らが見つけたというよりは、教授や研究所から与えられた目の前のテーマをおもしろがって研究しているうちに自然に研究が進んできたように思います。
 自転車に乗ったり、犬の散歩をしたりと、からだを動かしているときは頭が活性化して、アイデアが浮かぶようです。歩きながら頭の中で色々計算式を操作したり、論文の筋立てを考えることもよくあります。牛久市に住んでいるので、野外活動の環境には恵まれています。昨年から地元のスポーツクラブでエアロビクスも始めました。ふだん使わない筋肉を使うのが楽しいですね。中学生のころから天体観測をしており、今でもときどき天体望遠鏡を出して星を観るのがリラックスになっています。

光ファイバ振動・音響センサとその原理
図
湾曲した光の導波路が運動すると、その経路の垂直方向の速度成分と曲率の積に比例した
ドップラー周波数シフトが起きる。この原理を利用して、例えば渦巻き状の光ファイバセンサを構成
すると、従来のひずみセンサでは達成されなかった高感度なひずみ速度センサが構築できる。

影山和郎 教授 <略歴>
1981年東京大学大学院工学系研究科(舶用機械工学専攻)博士課程修了、工学博士取得。同年、通産省工業技術院(当時、現・産業技術総合研究所)機械技術研究所に勤務し、先進複合材料と力学特性の評価を研究する。85年米国デラウエア大学客員研究員。88年より東京大学工学部助教授として、超軽量船の構造設計と材料評価を行う。94〜95年米国スタンフォード大学客員研究員、97年から東大大学院工学系研究科教授。専門は知的材料構造、構造ヘルスモニタリング。

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