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次世代航空機のスマート複合材構造システムを開発し,将来,純国産航空機に応用するのが夢

大学院新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻
兼担 工学系研究科 航空宇宙工学専攻
教授 武田展雄

●センサー付きの細径光ファイバーを埋め込んだ材料を開発
 航空機には軽くて強い材料が必要です。ここ二、三年で就航する航空機の尾翼、主翼、さらには胴体部分には、金属ではなく、強度を増したCFRP(carbon-fiber reinforced plastics)系の材料が使われるようになっています。
 私が研究しているのは、損傷の程度を自らがモニタリングし、さらには修復もできるスマートマテリアル(知的材料)で、航空機や人工衛星などに用いることを目指しています。
 すでに通常の3分の1の直径40µmの細径光ファイバーを開発し、これにブラッグ格子(FBG) を書き込んで、さらにCFRPに埋め込むことに世界で初めて成功しました。ガラスからなる光ファイバーのコア部に等間隔にブラッグ格子と呼ばれる縦縞模様を入れると、光信号のうちの特定の波長の光が反射してもどってきます。この光の波長を調べると、このブラッグ格子の部分に起こったひずみを測定でき、ひずみセンサーとして使えるのです。なお、このFBGセンサーを持つ細径光ファイバーを埋め込んでも、CFRPの強度は落ちません。
図
細径FBG光ファイバーセンサーを埋込んだCFRP積層板

●常に自分の研究のオリジナリティは何かを考える
 研究者になったのは、高校2年生のときに見た、アポロ11号打ち上げのテレビ中継がきっかけでした。中学生くらいまでは刑事になりたいと思っていましたが、血を見るのが怖いのであきらめました。
 自分は天才肌ではなく、科学者よりも技術者が向いていると考え、材料の研究に取り組んできましたが、その間、いつも自分のオリジナリティは何かを突き詰めて考えるように心がけてきました。
 若い人たちにも自分の研究のオリジナリティを常に考えてほしいと思います。今は何でもすぐにインターネットで調べることができますが、情報に振り回され、考える余裕がなくなるのが心配です。研究者は独自のストーリーを考え、人にわかりやすく説明できるようにすることが大切なのです。
 そのためには語学も必要です。私自身も若いときに英語を身につけるのに大枚をはたきましたが、最も効果的だったのは、繰り返しシャドーイングすることでした。
 発想に行き詰まったときには自然界ではどうなっているかを考えます。例えば竹の維管束を守る鞘は、たわむときに力のかかる周辺部に多く分布しています。このような自然物のすばらしい性質が案外ヒントになるのです。
 片道1時間の通勤時の読書がいい気分転換になっています。最近おもしろかったのは『ダ・ヴィンチ・コード』。お気に入りはフロリダ大学の同窓の作家、マイクル・コナリーのミステリーです。時間があれば日曜日に映画を見に行きます。好きなのはやはり刑事物ですね。
 工学部COEでは、ほかの先生方の研究を眺めながら、協力できるところを見つけていきたいと考えています。私自身、東大先端科学技術研究センター時代に光ファイバーセンサの研究者である保立和夫先生が隣の部屋にいたことが、現在の研究につながっています。異分野の研究者と話すことは大きな刺激になり、新しい研究分野が生まれることもあるのです。
 10年後くらいには、私たちの開発したスマートマテリアルが使われた次世代航空機がお目見えするでしょう。現在製造が進んでいるボーイング787型機の構造物の約35%は日本の企業が作ったもので、ほとんどが複合材構造です。近い将来、企業と協力して、純国産の航空機を作ることも大きな目標です。

武田展雄 教授 <略歴>
1977年東京大学大学院工学系研究科航空学専攻修士課程修了後、同博士課程へ進学。78年からフロリダ大学大学院 Engineering Mechanics専攻博士課程へ入り、Ph.D.の学位を受ける。その後、東大博士課程にもどり、工学博士に。日本原子力研究所高崎研究所研究員、九州大学助教授(応用力学研究所応用弾性学部門)、東京大学助教授(先端科学技術研究センター先端材料大部門 ロボチクス材料分野)等を経て、98年から現職。

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