アメリカエネルギー省(DOE)が進めているマイクログリッド研究の実施責任者であるChris Marnay博士(Ernest Orlando LawrenceBerkeley National Laboratory、LBNL)からマイクログリッド研究、需要家の分散型電源導入分析、米国の長期エネルギー需給見通し策定に用いられるNEMS(全米エネルギーモデル)による分散型電源普及予測分析など関連研究の最新動向を講演していただいた。
このマイクログリッド研究にはDOE,CEC(カリフォルニアエネルギー委員会)を中心に、DOE傘下の国立研究所、大学、電力会社、EPRI、メーカー等が参加している。Consortium for Electric Reliability Technology Solutions(CERTS、信頼性技術ソリューションズコンソーシアム)と呼ばれ、アメリカの産官学が連携して取り組んでいる。
マイクログリッドは配電系統に接続する負荷とコージェネレーションや再生可能エネルギーを利用した分散型資源(主に500kW以下の小型電源)からなるクラスターである。系統連系モード、自立運転モードで運用可能であり、両モードを高速で切り替えられることが要件である。現時点では電気事業の系統連系ルールにより、マイクログリッドからの系統貢献は困難であるが、将来は電圧維持や予備力供給などアンシラリーサービスを提供することを目指している。
LBNLのモデル分析によると、2025年まででは、内燃機関、マイクロタービンなど既存技術の浸透が支配的である。排熱回収で冷房も行うことにより、病院など熱需要の多い部門のみならず、熱需要の少ない事務所でも分散型電源が導入され、分散型電源の研究開発が支援される場合、業務部門での分散型電源設置容量は23.6GW(2025年)に達し、政府支援がない場合より6.6GW普及が促進される。
主な議論を以下に要約する。
- マイクログリッド内の分散型電源毎に設置される潮流制御器とマイクログリッド全体のエネルギーマネージャの連携方法
- エネルギーマネージャは主に外部からの情報(需要反応プログラムなどの要請)に基づき、マイクログリッド内の運用を制御する。潮流制御器は電圧などローカルな制御のみ分担する
- マイクログリッド内の多品質電力供給のフィーダーはどのようになっているか
- 2025年までの業務部門における分散型電源の普及規模を予測しているが、業務部門の電力需要のシェアはいかほどか
- 需要家の分散型電源導入計画モデルにおける電気料金設定の種類
- 蓄熱技術を考慮したとき、分散型電源の普及規模はどの程度増減するか
なお、本講演で紹介された主な研究報告は、以下のURLから入手可能である。
http://eetd.lbl.gov/ea/EMP/der.html |