日時:2005年1月28日(金)
場所:東京大学浅野キャンパス武田先端知ビル5F
Group 1
G1-1: フェイルセイフによる信頼性管理 |
構成メンバー:
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機械工学専攻 |
山神 成正(幹事) |
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産業機械工学専攻 |
花山 良平 |
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システム量子工学専攻 |
今井 康之 |
概要:
誤作動などの事故で起こる問題を回避するため、故障や操作ミス・設計上の不具合などの障害が発生することをあらかじめ想定し、事故が起きた際の被害を最小限にとどめる対策をとる設計思想としてフェイルセイフがある。現在この設計が生かされている例として、石油ストーブ転倒時の自動消火や、加圧水型原子炉の制御棒電源切断時に対して制御棒が自重で炉内に落下し自動的に炉を停止させる設計などが挙げられる。電車の自動停止装置で有名なATSや車のブレーキシステムもこれに含まれる。しかし、事故のケースや被害の内容など現社会で実用的に使われている機器やシステムにおいて多義に渡っており各事例に対して現在考えられているフェイルセイフとしてすべてに対応を行うことは困難である場合が想定される。そこでここでは現在考えられているフェイルセイフについて再検討を行うと共に、多岐にわたる任意の事象についてその適用及び不具合が生じた時の修正目標や対応を分類し整理することで、本来フェイルセイフが目指す事象を踏まえ、その新しい概念を提唱することを目的とし検討を行っていく。
フェイルセイフは冗長設計が基本である。例えば、機器冗長、情報冗長、時間冗長、機能冗長などである。また、フェイルセイフが成立するためには、定義としてある被害を最小限にとどめる安全性に必要な「機能」の他に、どの程度で対応できるか「時間」、実際機器等の対象に活用する際の「コスト」の3つが上げられる。これらをバランスよく取り入れていくことで有効なフェイルセイフ機構が成立すると考えられる。しかしこれらの対応策は例えば医療機器など即座に人命にかかわるようなものには対応が困難である。さらに、安全側を一方に固定可能かどうかという問題もある。そこで対象と目的を分類し、これまでのフェイルセイフでは適用できないものを含め、問題発生時に破局へ至らない具体例を考える。
フェイルセイフの対象としては様々なものがあるがここでは生活環境を取り巻く中で主に見聞きするものとして、工作機械、自動車、エレベータ、船、プラント、原子炉等(Grp.1)、そして人工衛星、航空機、医療機器等(Grp.2)を考えた。これら事象を、事故時または故障発生時に被害を最小限にとどめるために人若しくは機械が修理を行える対象を修理系、代価品等で補えるもの若しくは直接改善に向かえないものを非修理系として分類した場合、それぞれGrp.1とGrp.2が適用できると考えられる。また同時に各事象において考えられる被害には、部品・目的・機械寿命・積荷・人命・環境と大きく分けることが出来、問題発生時に安全側に移行するためには、各被害に対し優先度が生じ段階的な対応が必要となる。この時、各被害に対して対応を行うための時間若しくは段階的対応を行うことで新たに生じる時間を時間的危機度とし更に詳細に分類する。時間的余裕が生まれるものに対して、工作機械、エレベータ、人工衛星などが挙げられるのに対し、各段階で迅速な対応が望まれるものに原子炉、医療機器等がある。
そこでフェイルセイフを適用する対象としてシステム全体、各要素など機械的段階と、時間的段階に分けて考え、危険に対して防御システムを含んだ自己修復機能まで取り入れた考え方を取り入れる。また時間的かつ要素的に余裕のない事柄をとりあげ、対応策を考えていく中で広義のフェイルセイフについて考えた。
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G1-2: Improvement of Reliability Control Using Computational Simulations |
構成メンバー:
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システム量子工学専攻 |
青柳 登(幹事) |
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システム量子工学専攻 |
澤田 明彦 |
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システム量子工学専攻 |
梶田 信 |
概要:
Computational sciences are rapidly emerging as a subfield of
theoretical chemistry, physics, biology, etc. and they have been
recognized as a powerful tool to investigate or predict the various
phenomena. This kind of work has many advantages than experimental
works have since they are prior to the applications which are not
observed by experimental measurement such as a weather forecast, a flow
analysis of an ocean current, collisional phenomena among astronomical
bodies, chemical reaction pathway in molecular scale, and so on. In the
present survey, the simulations for environmental science, particularly
nuclear waste disposal problem, are mainly to be discussed.
The high level waste (HLW) consists of high radioactive nuclei
including various actinides is separated and then HLW is kept as a
glass matrix under strict control in temporary repository place. In
Japan, multi barrier system, which consists of artificial barriers and
natural barrier, is proposed for underground system. The artificial
barriers made of glass matrix of radioactive nuclei, metal canister
that covers glass matrix, metal made overpack and bentonite clay as the
first buffer. Then natural rocks are expected functioning as a final
barrier of the toxic nuclei and this is called natural barrier system.
There are many studies dealing with chemical behavior or transportation
of nuclei in the system.
Computational calculations by ab initio MO (Molecular Orbital) or DFT
(Density Functional Theory) gives the desired information such as
coordination geometry of stable the complexes, however, real system
requires far larger scale and astronomically large number of molecules.
In the meantime, other techniques such as MC (Monte Carlo), several
simulations related to fluid dynamics and so-called macroscopic model
simulation are performed to be applications which are closer to the
real systems.
There is no study which can compensate all scale of physical and
chemical phenomena in this system and this might not be a solution to
estimate the reliability. We studied what is the desirable picture for
simulator in order to reduce the uncertainty of the nuclear waste
disposal.
Reference: Toraishi, T., Doctoral dissertation in the university of
Tokyo (2004).
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G1-3: Discussion of Human Factors to Improve Reliability of Mechanical Systems
(機械システムの信頼性向上のためのヒューマンファクタに関する議論) |
構成メンバー:
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航空宇宙工学専攻 |
杉浦 正彦 |
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機械工学専攻 |
光石 暁彦 |
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機械工学専攻 |
津田 伸一(幹事) |
概要:
機械システムを管理・運用するうえでのヒューマンファクタをとりあげ、機械システムの信頼性向上をはかるうえで重要となる人間の果たすべき役割について、学際的な考察をおこなう。
まず、今回とりあげるヒューマンファクタの範囲を限定したうえで、ヒューマンファクタに起因する問題点と、従来のアプローチ法や現在の動向を概観する。
続いて、フェイルセイフの実現が難しい航空機を例に、管理・運用における信頼性向上をはかるうえで人間の果たすべき役割を明らかにするため、有人システムと無人システムの優位性の比較を、経済、法律、心理などの各観点からおこなう。
結果として、経済や法律の観点からは無人システムの方が優位である一方、心理などの観点からは、無人システムを導入するうえではいくつかの問題点があることを指摘する。
最後に、ヒューマンファクタの問題を考えるうえでは、哲学などに根ざした人間に対する深い洞察が必要であることを示すとともに、機械システムにおいて人間が果たすべき役割について、将来的な予想を交えた提言をおこなう。
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G1-4:大規模システム構築における信頼性確保の手法の検討
−航空管制システムを題材として− |
構成メンバー: |
航空宇宙工学専攻 |
中村 友哉(幹事) |
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航空宇宙工学専攻 |
永島 隆 |
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航空宇宙工学専攻 |
柏 宗孝 |
概要:
一般にシステムの規模が大きくなるにつれて、全体的な信頼性を確保することは難しくなる。このような信頼性の高い大規模システムを構築するためには、設計の時点から最適性だけでなく信頼性確保を一体的に考慮していく必要がある。
本発表では依然として旧来の手法をベースに成り立っている航空管制システムを具体例として採用し、本システムの問題点を洗い出した上で、システム工学的見地に立ってより高い信頼性を確保するための改善の方向性を提案する。
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Group 2
G2-1: Suggestions for an innovative medical facilities to the super-aging society(老人科のススメ) |
構成メンバー: |
機械工学専攻 |
長谷川 洋介 |
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機械工学専攻 |
井口 裕道 |
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機械工学専攻 |
杉井 泰介 |
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機械工学専攻 |
山田 雄士 |
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機械工学専攻 |
福多 将人 |
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機械工学専攻 |
塩崎 聖治(幹事) |
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環境海洋工学専攻 |
圖子 博昭 |
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システム量子工学専攻 |
横田 敏彦 |
概要:
昨今、高齢社会において社会保障費の増大、医者1人当たりの患者数の増加等が問題となっている。それらの問題を解決するためには予防及び診断レベルでの診療が重要であると考えられる。そこで、高齢者医療に特化した専門科の設立を念頭に置き、それが実現した場合の経済的波及効果の見積もりを行う。
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G2-2: "生体分子モータと静電マイクロモータの比較研究"
"Comparison Study of Protein Motor with Electrostatic Micromotor" |
構成メンバー: |
地球システム工学専攻 |
大槻 晶 |
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航空宇宙工学専攻 |
酒井 英司 |
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機械工学専攻 |
佐藤 義久 |
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機械工学専攻 |
椎原 良典 |
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機械工学専攻 |
塚本 哲 |
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機械工学専攻 |
三輪 潤一 |
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産業機械工学専攻 |
森井 洋 |
概要:
生体分子モータの構造及び駆動原理を人工的に作成できる静電マイクロモータと比較することにより、既存の静電マイクロモータの問題点を明らかにし、マイクロモータの駆動効率を向上させるための新たな知見を得るのが本研究の目的である。生体分子モータの例として、単細胞生物の鞭毛を駆動するモータの中でも、プロトンの移動によって駆動するF0モータを取り上げた。これに対して静電マイクロモータの例として、既に動作原理及び作成技術が確立されている、半導体加工技術を用いて作成される平面モータを取り上げた。どちらのモータも、電荷の移動により駆動力を得る回転モータであり、類似した構造を有している。マイクロ静電モータの駆動効率を低下する大きな要因として、回転子と基盤、回転子を基盤に固定するためのベアリング間に発生する抵抗が問題となっている。これに対してF0モータは、立体的な構造を持つことにより、ベアリングを用いずに回転子をステーター上に固定する構造を有しており、これにより回転子が周りを取り囲んでいるタンパク質と直接的に接触せず、モータの駆動効率を大きく上げる要因となっていると考えられる。動作原理としては、静電マイクロモータは回転子と、その周りに作成されたステーター電極との間に発生する静電引力によって駆動されている。生体分子モータは、水のブラウン運動の影響を受けている中で、プロトンが回転子、又はステーターを通過する際に生じる静電引力によって動作すると考えられている。本研究では、F0モータの駆動原理には不明な点が多く、比較することが困難であるため、生体分子モータ及びマイクロ静電モータの駆動部の構造を比較し、その違いがモータ駆動力に対してどのような効果を生じるか考察した。これらの比較検討により、マイクロモータを作成するために必要な新たな技術的革新を提案する。
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G2-3: "愛玩動物のためのμTAS"
"μTAS for Pet" |
構成メンバー: |
機械工学専攻 |
栗本 直規 |
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機械工学専攻 |
福島 直哉 |
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機械工学専攻 |
岩吉 俊介 |
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機械工学専攻 |
寺尾 京平 |
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産業機械工学専攻 |
糟谷 圭吾 |
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産業機械工学専攻 |
Pairat Tangpornprasert |
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産業機械工学専攻 |
張 東植 |
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環境海洋工学専攻 |
鈴木 徹也 |
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環境海洋工学専攻 |
竹腰 善久 |
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環境海洋工学専攻 |
掛川 晃彦 |
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Group 3
G3-1: EVALUATION OF THE HUGE SYSTEM -APPLICATION TO A INNOVATIVE HUMAN TRANSFER- |
構成メンバー: |
機械工学専攻 |
佐野 稔 |
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産業機械工学専攻 |
林 隆三 |
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航空宇宙工学専攻 |
辻 良史 |
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環境海洋工学専攻 |
広瀬 智史(幹事) |
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環境海洋工学専攻 |
二瓶 泰範 |
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環境海洋工学専攻 |
小山 寿史 |
概要:
Various new technologies have developed in Japan until today. The motivations for the developments are demands such as; to meet customer requirements, to satisfy safety concerns, to follow an economic growth, and to compete with shareholders. Especially, a failure such as having an accident is one of the greatest issues. Once such a failure is recognized, the existing technique is forced to be upgraded and expanded, and, thus, the whole system has become huge and complex.
What makes it difficult to estimate the huge systems? Issues coming from a huge system are not easy to be solved because of the complexity of the system. As the system become huge, it becomes significantly difficult to determine the "best" way to resolve the problem because there are various effects competing each other, whose contribution to the problem is not clear..
One of the huge and complex systems is a freight and transport system, such as railway and shipping. The transit systems have long history, in which an enormous number of devices and technical developments have been achieved to meet the various requirements.
As previously noted, a bloated huge system is so complex to be evaluated easily and properly. Therefore, it is hard to compare an existing system with an alternative one when an innovative change is being made.
For an evaluation method for such a complex system, we would like to introduce a unique method, which enables quantitative evaluation considering on quantitative information such as figures and numbers as well as qualitative information such as human intuitions.
Next, we will show how to apply the evaluating method. We would like to dare to propose an innovative alternative for a massive transit system, i.e., a passenger transport system by railway. Our proposal is operating cable cars on a flatland. Cable cars are now operated usually in a region, which has difference in elevation such as San Francisco, or mountainous areas. One of the advantages of cable cars is the ground-based drive unit, whereas the major vehicles, such as electric trains, have a drive unit mounted on themselves. In this way, the weight of vehicles could be reduced remarkably, and the energy efficiency can be improved. Taking full advantage of cable cars, we further suggest on operating cable cars in a loop as Yamanote line. We will estimate the various problems, which are expected to occur in their operation and will review the whole elements consisting of the existing human transport systems and the reason why the elements have been chosen at the same time. Through comparing our proposal with the existing system, we would like to evaluate the evaluation method for a huge system itself and the validity of our alternative.
現在までに日本では様々な技術開発が行われてきた。その原動力として、客などの要望、安全性、経済およびライバル会社などが挙げられよう。特に、事故などの失敗が大きい要因であると思われる。その結果、既存の技術を改修、拡張が求められ、現在、巨大で複雑なシステムが構築されている。
ここで、巨大システムの問題点を考えてみたい。巨大なシステムはその複雑さ故に、種々の問題に対しその解決が容易ではない。結果として出てくる問題に対し、様々な原因が複雑に絡み合い、そのウェイトの決定が困難であるが故、解決策が一意に決まらないのである。
これら、巨大で複雑に発展していったシステムの例として、列車や船に代表される輸送システムが挙げられるだろう。これらの輸送システムの歴史は古く、現在までの多種多様な工夫や技術開発およびその駆動力となった原因は膨大である。
先述のとおり、膨れ上がった巨大なシステムは非常に複雑なものである。そのため、巨大なシステムの評価を行うことは容易なことではない。よって、革新的な変更を行おうとした場合、既存のものに対するその代替案との比較が困難なものとなる。
そこで我々は、複雑なシステムを評価する方法として数値情報などの量的な情報とフィーリングなどの質的な情報を考慮して、ある事象を定量的に評価できうる独特な手法を紹介したい。
次に、その具体的な適用例およびその方法を示す。巨大な輸送システム、とくに列車などの人間を輸送するシステムに対し、我々はあえて革新的な代替案を示したい。現在、サンフランシスコなどの高低差のある地域、山間部にのみで通常運行しているケーブルカーを平地で運行させる方法を提案する。特に山手線などの環状線での運行方法を議論したい。ケーブルカーの利点は、モーターなどの駆動系を車内に搭載する、電車に代表される車両と異なり車外に設置することができることである。これにより車両重量を大幅に減らすことができ、エネルギー効率を改良させる可能性がある。この利点を十分に利用し、運行する上で発生するだろう種々の問題点を予測し、同時に既存の人間輸送システムを構成する要素およびその要素が構築された原因を見直していく。この代替案と既存の人間輸送システムを比較することで、巨大システムの評価方法および代替案の妥当性を評価していきたい。
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G3-2 : Systematic problem of products safety "Learn from MMC issues"
製品安全性の系統的問題の解明 〜三菱自動車の失敗に学ぶ〜 |
構成メンバー:
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機械工学専攻 |
原 祥太郎 |
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機械工学専攻 |
山田 裕之 |
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機械工学専攻 |
須崎 光太郎(幹事) |
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地球システム工学専攻 |
羽柴 公博 |
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地球システム工学専攻 |
沢辺 頼子 |
概要:
The manufactured products which presently are used gathered up-to-date technology, developed in order to achieve the purpose which the human requires. That is something which passes the cycle, development, completion, use of the product, and improvement of trouble, to establish the high-level finished product from early stage, it is possible doing, it is few really. Because of that, maintenance after the using the product is very important. But, in regard to the system of maintenance there is no thing which is excessively observed so far, when developing into big accident and incident such as automobile, airplane and nuclear power generation only, it is rumored largely, location of the responsibility only it is made clear with, almost there are no times when it is utilized to the improvement of the system of maintenance. Then, it picks up the problem of the Mitsubishi automobile which this time has become also social problem, the maintenance system of the automobile, pays attention to the especially recall system. The recall system is the system which is adopted in the automobile, it is the system that the company the country (supervision ministry and board) applies the trouble which is found by the user, or the trouble which company side discovers, being free, does maintenance in the user. Because it becomes the big profit and loss, for the company is we would like to avoid declaration, but if it does from the point, safety you must do naturally, it is the measure. At each time accident occurs in regard to the profit pursuit of the company and the occurrence of accident it can unfold various arguments, but being utilized to the maintenance of modification and the generally known company of the system inside the company as for the actual place the fact that it is little is fact. It is observed by only this point in regard to this incident, it assumes that is a problem in only the Mitsubishi automobile, but whether may finish truly with problem just of the inside of the company, it is the place where doubt remains. That it became the miserable result that the latest problem sends the edge to the company which seeks the profit, from the double problem, ministry and board which neglects supervision reaches to big accident, you can guess. You think that we will make the problematical point which lies hidden in at this incident clear, proposition probably will go in regard to the importance of maintenance of the manufactured products.
現在使用されている工業製品は最新の技術を取り入れ、人間の要求する目的を達成するために発展してきた。それは開発、製品の完成、使用、そして不具合の改良というサイクルを経てきたものであり、初期の段階からの高度な完成品を確立することは可能であるにしても実際は少ない。そのため、製品の使用後のメンテナンスは非常に重要である。しかし、メンテナンスのシステムに関してはこれまであまり注目をされたことはなく、自動車、飛行機、原子力発電など大きな事故、事件に発展したときにのみ大きく取りざたされ、その責任の所在を明らかにするのみで、メンテナンスのシステムの改良に生かされることはほとんどない。そこで、今回社会問題にもなった三菱自動車の問題を取り上げ、自動車のメンテナンスシステム、特にリコール制度に着目する。リコール制度は自動車において取り入れられている制度であり、ユーザーによって見つけられる不具合、もしくは会社側が発見する不具合を会社は国(監督省庁)に申請し、メンテナンスを無料でユーザーに行うというシステムである。会社にとっては大きな損益になるため申告を避けたいところではあるが、安全という点からすれば当然行わなければならない措置である。会社の利潤追求と事故の発生に関しても事故が起きるたびに様々な議論が繰り広げられるが会社内のシステムの変更、いわゆる会社のメンテナンスに生かされることも実際のところは少ないのが事実である。この事件に関してもその点にのみ注目され、三菱自動車のみに問題があるとされるが、本当に会社内だけの問題で済ましていいかは疑問が残るところである。今回の問題は利益を求める会社に端を発し、監督を怠った省庁という二重の問題から大きな事故に至るという悲惨な結果となったと推察できる。われわれはこの事件に潜む問題点を明らかにし、工業製品のメンテナンスの重要性に関して提案いこうと考えている。
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G3-3 : Reliability of Network
ネットワークの信頼性 |
構成メンバー: |
機械工学専攻 |
熊谷 知久(幹事) |
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機械工学専攻 |
有賀 清一 |
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機械工学専攻 |
宮澤 真史 |
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システム量子工学専攻 |
鈴木 正昭 |
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システム量子工学専攻 |
伊東 聰 |
概要:
The network organizes many kinds of information, social and biomechanical systems such as the Internet, the traffic system, and the blood-vessel system. Network systems are used to provide high-speed or flexible interconnections, share resources from remote places and realize distributed processing, and the increasing number of social infrastructures and mechanical systems are going to utilize the network in the near future. However, one must consider a lot of risks that may lead to disorder of the entire system before a network system is designed.
Our project makes a case study of failures occurred in the computer network in the past. The computer network experiences serious failures, and the system is continuously updated in order to improve security and reliability. Several failure incidents regarding the network structure, security and legal responsibility are investigated in the project from the technical or historical point of view. Separate incidents will be categorized by introducing a graph-based modeling method, which illustrates the structure of the failures in a network system. The goal of the project is to extract potential risks lie in the network and propose a guideline of design and operation to construct a reliable network..
インターネットや道路網、血管系などネットワークは人間界、生物界の様様なところで見受けられる。これらは高価なリソースの共用や遠隔地の高速接続、負荷の分散などを目的としていることが多い。しかしながら、やみくもにネットワークを構築したり、適切な運用を怠った場合、ネットワークはその機能を十分に発揮できなかったり、また、障害を起こしてシステム全体が大きなダメージを受けることになる。
このため、本報告においては過去に発生したネットワーク構築・運用における失敗事例を体系的に調査し、その原因を究明することによって、ネットワークの正しい構築・運用方法について提言することを目的とする。解析手法としては、ネットワークをエッジとノードからなるグラフ構造によってモデリングし、個々の事例についてそのエッジとノードの構成や特徴を抽出する手法を取る。
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G3-4 : Technical Innovations of Hybrid Car Behind the Scenes |
構成メンバー: |
機械工学専攻 |
松浦 一雄(幹事) |
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機械工学専攻 |
鈴木 康方 |
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産業機械工学専攻 |
川元 康裕 |
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航空宇宙工学専攻 |
田中 健作 |
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地球システム工学専攻 |
小林 史歩 |
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地球システム工学専攻 |
高 秀君 |
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航空宇宙工学専攻 |
丸 祐介 |
概要:
There are various kinds of scientific technology around us. Among them, automobile technology not only satisfies demand for transportation, but also has a great impact on the trend of global environment and engineering technology having a wide range of influence on industry, society and economy. In these circumstances, hybrid car which was invented at the beginning of 20th century is rapidly spreading through the world.
Nowadays, hybrid car is being discussed as a technology which is expected to play an important role in supporting the sustainable social development. However, it is hardly to say the process of its technical innovation is adequately interpreted by unifying related fields, such as social problems, scientific technology and environmental problems. On the other hand, unified understanding of the process of the technical innovation contributes not only to make clear the background of the innovation but also to think how mechanical engineering develops under the concept of the society with "the sustainable development".
In the research, we suppose human society, scientific technology and global environment to be bases for investigation into hybrid cars, and discuss how each basis has been dynamically interacting with each other in the process of the technical innovation.
Finally, we will unify material obtained from the investigation in time-series manner, then discuss and evaluate the results.
我々の身の周りには、数多くの科学技術が存在するが、中でも自動車技術は人類の移動に対する要求を満たすのみならず、産業、社会及び経済に広い裾野を持ち、地球環境や工学技術の動向に対しても、大きな重要性を有している。このような状況下で、20世紀初頭に革新的な技術として登場したハイブリッド車は、急速な勢いで世界中に広まっている。
今日、ハイブリッド車は、持続的な社会発展の一端を担う技術として議論されているが、その技術革新の過程に対し、社会問題や科学技術動向及び環境問題など内包する分野を統合した解釈が十分なされているとは言い難い。一方で、その技術革新の過程を統合的に捉え直すことは、単にハイブリッド車発展の背景を明らかにするのみならず、持続的な発展を可能にする社会で機械工学はどのように成立するかを考える発端にもなると期待される。
そこで、本研究では、人間社会、科学技術及び地球環境の3つを柱として、ハイブリッド車に関する調査を行うことにより、その技術革新の過程で、個々の柱が互いにどのような動的関係を築いてきたのか明らかにすることが目的である。
最終的にこれらの調査により得られた資料を時系列的に統合し、評価及び議論を行うことにより研究を展開してゆく。
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G3-5 : Assessment of Present Standards - from Interdisciplinary
Perspective -
他分野から見た現在の設計基準の評価 |
構成メンバー: |
機械工学専攻 |
杵淵 郁也 |
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環境海洋工学専攻 |
山東 篤 |
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航空宇宙工学専攻 |
西野 峰之 |
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航空宇宙工学専攻 |
柿内 利文 |
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航空宇宙工学専攻 |
堤 誠司(幹事) |
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地球システム工学専攻 |
尾西 恭亮 |
概要:
Development of technology in the history was followed by many successes and failures, and there were especially many cases where the failure helped technological achievements. Engineers today can derive meaningful lessons from discussing case-studies and also from comparing design concepts of different fields. For example, a series of plane crashes of the Comet jet highlighted the importance of the assessment of the fatigue fracture in a plane design and the concept of "fail-safe design," which is now established by FAR (Federal Aviation Regulation), became one of the plane design standards. The concepts of "damage tolerance" and "safe-life", which are related to "fail-safe," were together set down. On the other hand, focusing attention to standards for an earthquake, they are reviewed every after severe earthquakes like a cat-and-mouse game, and radical solutions are not yet set down. For example, in the case of "Tokachioki Earthquake" in 2003, lack of the consideration into the "long-term seismic wave" in the present building standards was pointed out. Recently, "Tonankai Earthquake" is expected to occur in the near future with high probability, and to make matters worse, is predicted to be the same magnitude of "Tokachioki Earthquake". If "Tonankai Earthquake" earthquake happens, high buildings in big cities will suffer serious damages. The difference between a plane design and a building design derives from comprehensive consideration into many aspects i.e. an aspect of economy or that of maintenance, etc. However, can we conclude that the present design concepts are enough? As above when you weigh the accident cases and the design concepts, you can see that useful information in some fields of engineering is also useful in other fields all the more for their differences in histories and professions. So we studied the past accidents and the historical backgrounds of the present standards or regulations in various fields of engineering, for example, planes, buildings, railroads, nuclear power plants, etc. To compare the lessons through these cases and design standards, we can find out the analogy and new ways of assessment. Extrapolating the analogy and the new ways of assessment obtained here, they can be new criteria to assess another present design and they also can be one of the useful tools as well as the sophisticated theory or the refined computer simulation. The final purpose is to assess the present design concept of innovative technologies by the analogy through the case-studies and to show the necessity and availability of this method.
人類の何世紀もの技術の営みの中には数多くの成功と失敗があり、特に失敗が大きな成功を導いた例が多い。さまざまな工学分野における歴史的なケース・スタディーを行い、そして各分野における設計基準や思想を比較検討すると、今日の技術者は非常に重要な教訓を導き出すことができる。例えば 1953 年に世界初のジェット旅客機コメットで起こった墜落事故は航空機設計における疲労破壊の重要性を浮き彫りにし、今日、米国の FAR(Federal Aviation Regulation) で定める Fail-safe design の考えを設計基準に加えることとなった。その後、 Fail-safe と密接に関連した考え方にある損傷許容設計 (Damage tolerance) 、安全寿命 (Safe-life) が定められた。一方、建築物の耐震基準に着目すると、大地震の度に設計基準が改定されるといういたちごっこが続いており、抜本的解決を施すには至っていない。例えば 2003 年に起こった十勝沖地震では長周期地震動に対する建築基準の甘さが指摘されており、もし同様なマグニチュードと予想されている東南海地震が発生したなら、それは近代都市の巨大構造物に深刻な被害をもたらす可能性がある。航空機と建築物における設計思想の違いは経済的側面、管理 ( メンテナンス ) の側面などを総合的に考慮したときに現れてくるものではあるが、果たして現在の耐震に関する設計思想がよい結論だといえるのだろうか。
以上のように異なる分野における事故事例と設計基準を比較検討したとき、すべての工学分野には時代や専門領域が違うからこそお互いにとって有益となりえる情報が介在しているといえる。そこで我々は航空、建築、鉄道、原子力など様々な分野における過去のケース・スタディーを行う。得られた教訓や後の設計基準に及ぼした影響を比較したりすることでそれらの中にある共通性を見出すことができ、また新たな評価基準を設定すれば別の尺度で比較を行うことができる。これらの共通性や評価基準を外挿すれば新たな分野を評価する基準とすることができ、今日の高度な理論と洗練されたコンピュータ・シミュレーションと同様に、技術者にとっては大事な知的道具の一部となりえる。その必要性かつ有用性を示すために、今日取り組まれている新たな工学分野における設計思想の評価を最終目標とする。
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