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第20回イブニングセミナー 講演者: 國中 均 教授 担当:新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 武田展雄
2010.10.21
工学部2号館1F 213号大講義室
GCOE 「機械システム・イノベーション国際拠点」
第20回イブニングセミナー
宇宙航空研究開発機構
宇宙科学研究所 宇宙輸送工学研究系
國中 均
日 時:2010年10月21日(木) 18:30~20:00
場 所:東京大学工学部2号館1F 213号大講義室
講演内容:イオンエンジンによる「はやぶさ」小惑星探査機の宇宙動力航行
要旨:
ロケットや人工衛星に積み込む燃料重量には自ずと限界があるので、少ない量を効率的に使用することが至上命題です。宇宙用推進機関の高性能化の「極意」とは高速噴射を意味します。化学推進は、燃料に内在する化学エネルギーを用いて、燃料そのものを加速噴射します。重量当たりの化学エネルギーは物質に固有なので、噴射速度は秒速5kmが上限となります。一方電気推進は、噴射質量と加速エネルギーを別々に調達して、任意の割合で調合できるので、速度の上限は一気に取り払われます。加速エネルギーは専ら太陽電池からの電力を利用します。「はやぶさ小惑星探査機」に搭載するマイクロ波放電式イオンエンジンでは、噴射速度毎秒30kmにて3台同時運転で約1kWの電力を消費し、(たった!?)24mNの推力を発生します。これは、1円玉2個程度の力に過ぎず瞬時の推力は小さいですが、長時間動作させれば最終達成速度はことのほか大きくなります。この長時間作動というのが曲者で、その機能性能を証明するために2年半の連続耐久試験を2回、つまり5年間も試験に費やしました。開発には大変苦労させられましたが、一度宇宙空間に投入されたイオンエンジンは地球からの指令電波に応じて「はやぶさ探査機」を加速させ、前途に振りかかるいくつもの困難を創意と工夫・根性で乗り越えて、地球と小惑星「いとかわ」間の往復航行を4万時間の運転時間をもって成し遂げました。これまでの人工衛星はロケットにより加速された以降は、慣性(惰性)飛行することに比べると、マイクロ波放電式イオンエンジンを駆る「はやぶさ」は、宇宙を動力航行する宇宙船と言えます。今まさに、地球~小惑星間往復航行を実証し、「宇宙大航海時代」を切り開こうとしています。現在傾けられている電気推進のさらに高性能化への研究開発努力は、もっと遠方のメインベルト帯小惑星群、さらには木星へと向かう深宇宙探査を現実のものへと導くことでしょう。
本件連絡先:
東京大学大学院工学系研究科新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻
教授 武田展雄
E-mail: takeda@smart.k.u-tokyo.ac.jp
GCOE事務局 E-mail: gmsi-office@mechasys.jp, Phone: 03-5841-7437
添付ファイル: 第20回イブニングセミナー.pdf